真情

天気はよいものの、寒さはまだ居座っている弥生。東京では桜は開花宣言があったけれど、ずっと寒いので、満開は4月2日あたりらしい。

 

今日は、大阪豊中森友学園国有地払い下げ問題で、国会での、学園理事長証人喚問があったので、朝からテレビを見ていた。午前中は参議院予算委員会での証言(結構尋問的であった)、午後は衆議院でのものである。

 

政治家の関与があったか、なかったか。また、財務局などへ政治の圧力があったか、なかったか。安倍首相夫人からの寄付があったか、なかったか、などが争点になっている。

 

国会では、参考人招致と異なり、証人喚問は虚偽の発言をすると偽証罪に問われる重いもので、私も初めて見たが、証人が最初に宣誓をし、署名、捺印をして始められる。

参考人として招致することをずっと自民党は渋っていたのだが、急転直下、一週間前に、証人喚問というシビアなもので応諾したのは、彼らの戦略であったのだろう。

 

私は、このきわめて国粋的な教育方針の学校にはまったく賛成できないし、これが開校できなかったことは生徒や社会のためにもよかったとは思うが、一連のこの事件(疑獄ともいわれるが)を見るにつけ、安倍首相夫妻、稲田防衛大臣(所属事務所がこの学園と顧問契約を結んでいた)、大阪府知事といった、いわゆる保守の大物政治家たちが、かつての「盟友」を持ち上げるだけ持ち上げておきながら、一旦、世間から批判されると、簡単に、「盟友」を切り捨て、ひたすら関係のあったことを否定していることに、胸が悪くなっていたのであった。

 

だから、この理事長の「教育理念」には賛成できないものの、今日4、5時間視聴して、彼が嘘をついていないこと、まったく本音で話していることがよくわかった。そして、これまで熱心に支持してくれていたのに、皆が保身のために、急に手のひらをかえしたことに、非常に怒っている気持ちに共感した。

 

そもそも、この問題は、国有地の払い下げ価格が低すぎるのではないかと疑問が持たれて、豊中市議が質問状を出したところ、担当の近畿財務局が売却価格を非開示にしていたことがわかり問題になりだしたのである。当然誰もが何か不透明なことがあったのではと思った。

 

今日の質問の中で、3月にはいって、急に、それまで言わなかった安倍首相夫人からの寄付(「安倍晋三からです」と言って渡されたと理事長はいっている)100万円のことを言い出したのはなぜかと聞かれて、理事長が答えた内容、というか述懐のような言葉に私は胸をうたれた。

 

ゴミが埋まっていた問題があり、価格が急に下げられた経緯とか、いろいろな問題はあったし、教育方針への批判は受けてたつつもりだったのだろうが、安倍首相夫妻が彼との関係を否定し出したことから、「なんかおかしいな、自分は騙されているのかな、

ということは、国民も騙されていることにならないか。風向きが変だ。自分だけがひどく悪者にされている…」と思い出して、寄付の話を公表したのだという。

 

安倍夫妻や稲田大臣が関わりを否定しだし、さらに、財務局の官僚からも、「あんたは10日ほど姿を隠していてほしい」と弁護士を通していわれ、ホテルに缶詰になっていたうちに、巷では、彼の経歴詐称や認可要件の不足やら何やらバッシングが始まったのだった。

 

「公権力」などというのは、いわゆる、「左翼」の決まり文句であるはずなのに、今日は、理事長は、「何か風向きが変わってきた。公権力が自分の悲願だった学校設立をダメにしただけでなく、自分という人間の人権を押しつぶしつつある」という印象をひしひしと感じたのだそうだ。

 

政治的な右左をいうのもナンセンスではあるが、この超保守派で、元は安倍首相を「偉人」として尊敬していたひとの疑惑を晴らそうと頑張っているのが、野党議員という、

ねじれ現象になっているのが興味深くもある。

 

いわゆる、関西人の典型みたいなへんな「おっさん」みたいな人だが、話には虚偽の匂いがしなかった(また、偽証罪に問われるので、危険でもある)。とても真摯なものを感じた。自民党公明党・維新など、与党議員の質問は、この証人に対して、さんざん「偽証罪」を持ち出して、恫喝、おどかし、の念押しをしつつおこなっており、おそらく、どこかに瑕疵を見つけたり、誘導尋問でボロを出させようとしたのだろうが、テレビで中継されると、この「おっさん」のほうが表情からいっても真摯に話していることがよくわかり、むしろ逆効果だったと思う。

 

さらに、与党の失敗は、彼が「安倍晋三記念小学院」という名前を使って寄付集めをしたことなど、枝葉末節のことで論難していたが、問題は、国有財産の払い下げの不透明な経緯なのである。論点ずらしもいいところだった。詐欺師、嘘つきを証明しようとやっきになっていた。

 

彼は、学校認可申請も取り下げたし、また、学校の資産も建設費などの未払いで、行政から「差し押さえ」が入り、もう失うものはないから、強いのかもしれない。学校の負債総額は19億とかになるらしい。認可申請取り下げも弁護士の助言だったというが、その弁護士も、その助言のあと、すぐ、顧問をやめたという。取り下げをしていなければ、大阪府に賠償請求もできたかもしれなかったのだが。

 

あらゆる「仲間」に裏切られた「おっさん」の真情切々の証人喚問だった。もともとは嫌いなある野党議員がいたのだが、弁護士出身で、さすがに、鋭い質問の連鎖で、法廷ドラマを見るようで、安倍夫人の関与に迫っていた。

 

実は、この証人喚問はNHKは中継するとは明言しておらず、高校野球や相撲との兼ね合いが難しいといっていたのだが、これを中継するようNHKに電話しようというムーヴメントがインターネットを通じて拡散され、それでなくても、受信料不払いが増えている昨今だからだろう、視聴者の圧力が、中継を可能にした。

 

夜は、外国人特派員協会で証言するらしいので、また新事実がいろいろ出てくるかもしれない。