ここのところぐっと冷え込む日が続いているが、空気が澄んで、樹々が少しづつ紅葉し、それが青い空に映えてキラキラと風にそよぐさまは、やはり晩秋ならでは。ここは欅の並木道があちこちにあるので、見飽きることがない。
今のように夕方になると、まるで高緯度地方のように、黄金色のフィルターがかかったような
暮れ方になり、それも趣深い。電車に乗っていると、ふと富士山の小さな姿が見え隠れするのも、高い建物がないゆえの嬉しさである。
誰にも理解されない、ワームの国に閉じ込められて、6年以上。この国は地下にあるわけではないのだけど、世界のもう一方の裏側にある、影の国のようなものである。そうした影の国で
避難所を求めて、歩き回る女性の姿(多分私であろうが)、このケイヴからあのケイヴへ、といった姿を長い間、眠りの合間や目覚めの時に見せられてきた。
もっともっといろいろな不思議なイリュージョンが、まるでプロジェクションマッピングみたいに、家の壁や扉に投影された。昼と夜の区別が曖昧になって。
そういうことはさすがに最近はなくなったけれど。心が潰れるような夢を見せられたり、家の中で残酷な形で虫が死んでいるといったような、普通でないことが起こる。電車に乗れば乗ったで、スカルの絵のついた服を着ている人に度々遭遇する。最初は、たまたまヘヴィーメタルみたいな趣味なんだろうと思うようにしていたが、頻度が高すぎたりする。
神はどうして私にこういう試練を与えるのだろう。