預言

今日も朝から、信じられないような気温の上昇ぶり。地球温暖化否定説もあるけれど、やはり信じざるを得ないような、そんな暑さである。もっとも、暑いのが好きな自分には、焦げるほどでなかったら、じりじりした太陽も大歓迎なのだけれど。

 

ふと、ヴァッスーラのことを思い出して、最近、どうしているんだろうと思って、インターネットで見てみた。しばらく見ないうちに、wikiなども、充実した記述になっていて、一昔前の、賛否両論(今でも多少はそうだろうが)、否定的なトーン、キワモノ扱い的な記事が減って、認識が変わってきたようだ。

 

私がヴァッスーラと出会ったのは、彼女の訳本がカトリックのエンデルレ書店から出版されていた頃である。今でも覚えているが、普通のカトリック書店には置いてない本で、私が「これは何かなあ…」と手にとって見ていたら、大柄なドイツ人の店主エンデルレさん(敬虔な信徒として有名)が、キリストのメッセージを直接受け取っている女性の本です、教会はただし認めていませんが…と説明してくれたことを今でもありありと思い出すことができる。ヴァッスーラの名前に見覚えがあったのは、「カトリック新聞」で、「この女性の著作は間違いとは言えないものの注意すべき」というバチカンの「おふれ」が載っていたためだと思う。

 

半信半疑で手に取ったが、表紙のキリストの顔がなんとなくだが怖いな、と、気味悪く思ったりしたが、その後、買って読んだのだと思う。バングラデシュで国連職員の妻として、ファビュラスな生活を送っていた「社交界のひと」であり、生まれとしてはギリシャ正教徒である彼女に突然、天使が現れ、その後、キリストが彼女の手をとって、メッセージを書かせるようになったというもので、内容的には、背教への糾弾とか、現代文明の批判、教会一致等のメッセージで、黙示録的ではあるが、まあ妥当なものかとは思った。しかし、彼女の筆跡とキリストの筆跡は明らかに違うのだが、そのキリストの筆跡もなんだかな…という感じで、「聖心」をあらわすのだろうが、ピリオド代わりにハートマークがしょっちゅう使われるのも、女学生のノートみたいで、??な印象だった。

 

ただし、今振り返ってみると、懐疑的ではあったのだが、自分がどいういう時に、これを読んだかと考えてみると、現実生活でいろんな障壁にぶつかったり、フラストレーションがある時だったように思う。膨大なメッセージだったから何巻もあったのだが、ヴァッスーラ本を敢えて本屋へ買いに行く時というのは、振り返ればだが、現実にウンザリしている時であったと言える。

 

その後、彼女の著作はエンデルレからは出せなくなったのだろう、天使館という小さな、個人でやっている本屋さんへ移った。そこのニュースレターが送られてくるようになったが、興味はあるものの、終末論的でなんとなく肌合いが合わず、ヴァッスーラの描くイラストもなんとなくだが好きではなく、時々ぱらぱら見る程度だった。

 

90年代の終わりだったかもしれない、東京にヴァッスーラが来るよ、と教会の友人が教えてくれて、彼女は以前にも行ったことがあるというので、市ヶ谷のどこかのホール(教会ではない)へ講演を聞きにいった。

 

昔はファッションモデルをしていたこともあるというが、中年のヴァッスーラは、立派なブロンドヘアーを除けば、わりと普通のおばさん風で、話にも迫力があるというわけでもなく、「お告げ」を受けた普通の主婦が控えめに話をしている、という感じだった。ただし、結構、司祭やシスターが来場していて、驚いた。ミサではないが、フォーク風の讃美歌などが歌われ、私は結構しらけていた。

 

その後、ヴァッスーラの本も読まなくなったし、すっかり忘れていたのだが、ギリシャロードス島で毎年、大きな集まりがあるというのをどこかで読んで、ああ、信奉者が増えているのだなと感じた。

 

今回、youTubeで「預言と警告」というビデオを見つけてみてみたが、これが驚くほどよくできていて、その巧さに却って「あざとさ」「プロパガンダ臭」を感じてしまう自分であったが、中で述べられているロシアに関する預言の成就で使われている、革命後の教会の破壊などの映像は集中的に映されるので生々しく、歴史資料として、あまり見たことがなかったから、興味深かった。

 


預言と警告/ヴァッスーラ・ライデン「神のうちの真のいのち」より - YouTube

 

このビデオは、インタビュアーとして、バイク青年みたいないわゆる町の普通の「おにいさん」を使っているところが巧みで、日本の最近の用語で言えば、いわゆるB層相当な感じである。決して、ジャーナリストや神学者をぶつけているわけではない。初期には、スイスのジャーナリストだったか、神学畑の人だったかがインタビューをして、本を出したりしていたのだが。

 

驚いたのは、おどおどしているというほどではなかったが、普通のひとであったヴァッスーラのパワーアップ振りである。堂々たる雄弁を振るって、カリスマオーラを出している。

 

興味深いのは、私が読んでいたころは、一昔前なので、預言の「成就」などがまだなかったわけで、今、このビデオを見ると、「9.11」のちょうど10年前の「9.11」に、塔の破壊のメッセージがあったことなど、coincidenceがいろいろと言われ出していることだ。

 

「あまりにも都合よくないだろうか…」とは思うものの、自然破壊や、人間社会の歪みみたいなところはまったくその通りの指摘なので、頷くしかない。憐れみの神は厳しさの神でもあるという「裁き」の面が、現代の教会では強調されないところなので、この点を現代のキリスト教会の誤認識というか不足面であるとするかどうかが、ヴァッスーラの評価にも関わってくるのではないかと思う。