1週間から10日ぐらい前から状況がハイプレッシャーになったと言うか、ガラリと家の中の空気が変わって、夜になると「彼ら」の歌声が大きくなったり、あるいは遠ざかったり、さらにはメインキャラクターの声がおどろおどろしい息遣いになって喘ぐような瀕死の声が響いたりと、夜は恐ろしい時間になった。その声は声だけなのだが、眠っている私の顔に大きな空気の円盤が覆いかぶさるような圧迫感があり、私は息を殺して止むのを待っているしかない状態だった。

 

そうして朝まで延々と質問やら譴責があり、それに答えると、その答えを逆手にとってさらに

別種の譴責になったりと、止まるところを知らない。いわゆる言質をとったり、あるいは、余裕がないので素直に答えていると、想定外の反転した、はぐらかした言葉が返ってくる。疲れて合間合間に眠るだけである。だからこの1週間あたりは不眠状態がずっと続いている。

 

誰に話すとしても俄に信じられない話で、また証明の仕様もない(彼らの声は私にしか聞こえない)のであるが、「みんな」というのはどれぐらいの人数なのかはわからないが、家のなかに居て、私の一挙手一投足をじっと見つめているのだそうだ。私には「みんな」は見えないので、いわゆるアストラルボディーみたいな形で家に来ているのかと思ったりする。

 

この理不尽さに抵抗するには、彼らのルールをオールクリアにするしかなく、「そんなことをしても取られるはずがない」と私なりの設定解除みたいなことを叫ぶのみである。

 

はっきりいえば、こんな状況が続けば睡眠不足と恐怖で心を病むところへ至ってしまうと恐れている。昼間でも(今がそうだが)家の中は大音響でライブハウスみたいな状況で、それを逃れて外に買い物やカフェに行くと、出かける間際まで、「何何を失う、これこれを失う」という声が響く。

 

私が恐れるのはこれに耐えられなくなって、究極の選択に走ってしまうことである。それは避けなければならないが。