バレエ・リュス

明日で会期が終わる「バレエ・リュスの衣装展」を見てきた。これまでも展覧会の一部でいくつか見るとかいうことはあったが、このように140点ぐらいまでもの衣装をいっぺんに見るのは初めて。

 

見ているときにはそれなりに気持ちが盛り上がったのだが、とはいえ、これまでも感じたことだが、100年前のものなので、いかんせん大分傷みもあり、そもそもそんなに素晴らしいものなのか…。「バレエ・リュス」のものだと言われなければ、古びた宝塚の衣装って言われても、信じてしまうかも…。会場の熱気から離れてみるとそう思ったりする。

 

たしかに、音楽、舞台美術、衣装と三つの分野で、総合芸術としては百年前には最先端で素晴らしかったのだろうが、コンテンポラリーダンスとか何でもありの今日から見ると、衣装だけでは想像のよすがにならないし、美術としても、「当時は」インパクトが凄くあったかもしれないが、今では…という気もする。

 

バレエをやっているらしい少女が「こんな重いのでなくてよかったよ〜」なんて、傍のひとに言っていて、おかしかった。

 

カタログを仔細に読んでいて面白かったのは、バレエ・リュス自体は日本に来なかったのだが、いろんな影響を日本に与えていて、当時洋行したひとたちは、ヨーロッパでバレエ・リュスを「体験」していて、結構辛口の批評もあることだ。

 

作曲家の山田耕筰は、アンナ・パブロヴァは素晴らしいと言われているけれども、あれは技巧的に優れているだけ、バレエリュスも、見たときは感激したけれども、その波が去ってみると、あの舞台から、美術・装置と音楽を抜いたら、たいしたものは残らないのでは…と、冷静な感想を述べている。

 

欧州を熱狂させたから…というので、神話化されているところもあるのかもしれない。

 

たしかに「歴史的価値」はあるかもしれないけれど。やっぱり、あくまでも「当時の文脈において」インパクトがあった、ということなのかもしれない。

 

美しいもの、ゴージャスなものはいくらもあるわけなので、これら古びた衣装を見ても、「どうかな…」という感じがあった。オーストラリアの国立美術館がコレクションしているものだけれど、こういうものに莫大なお金をかけるって…。でも、ひょっとしたら、いいものは他にあるのかもしれない。サンローランのコレクションのなかにもあるそうだが、貸し出しはしなかったそうなので。

 

芸術と言われるものがみな、時代を超えた美しさを持つわけでもなく、だから、「時を超えて」感動を与えるものが、本物ということなのだろう。