ゆきたろう

暖かい日が続く三が日。最近はさすがに、近所の商店などでも正月休みをゆっくりとるところが多いなったようで、その分街はひっそりとしているが、そんな静けさもよいものだと思う。

 

テレビは騒々しくつまらない番組ばかりなので、ラジオをつけたら、子供用に日本の昔話をやっていて、思わず、ひきこまれてしまった。

 

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裕福な長者のおじいさんとおばあさんが雪国に住んでいた。何不自由ない生活だが、子供がいないことだけが、寂しいことだった。それで、小正月に村の子供たちを皆家に招いて、ぼたもちやおしるこをふるまった。

 

子供たちが帰ると、家はまたひっそりと寂しくなった。その晩から雪がひどくなった。

 

真夜中にドンドンと戸を叩く者がいる。心張り棒をはずして戸をあけると、白い子犬を抱いた子供が雪まみれになって、戸口にたっていた。

 

急いで子供と犬を招き入れ、どこから来たのかとか、いろいろ尋ねたが、子供は笑っているだけ。とても元気な子供だった。

 

その子は、それから長者の家に居ついて、老夫婦は目に入れても痛くない可愛がりようだったが、春が来て、向かいの山に最後まで残っていた雪が消えた日、子供はふいとどこかへ行ってしまった。老夫婦はいたくがっかりした。

 

そして、夏が過ぎて、秋が来て、また冬がやってきた。去年と同じ、小正月の前の晩、戸をたたく音がする。老夫婦が「もしや…」と思って戸をあけると、やっぱりあの子供、雪太郎だった。雪太郎も子犬もひとまわり大きくなっていた。

 

子供は犬と遊びながら、毎日元気に暮らし、おじいさん、おばあさんは目を細めていた。

 

そうして、長者の家の庭に残っていた雪が雨で溶けた春の日、また子供は姿を消してしまった。

 

そんな繰り返しが数年続いた。雪太郎はきまって小正月にやってきた。

 

おじいさんはある冬、風邪をこじらせて寝込んだ。あと少しすると小正月になって、雪太郎に会えるだろう、と言いながら眠った翌朝、おじいさんは亡くなっていた。

 

おばあさんは、次の朝、空をいく白い雲から、雪太郎とおじいさんがこちらに手を振っているのを見つけた。

 

おばあさんは「私もすぐに行きますよ…」と白雲に呼びかけていた。

 

おばあさんはほどなく亡くなって、長者の家はすっぽりと雪に埋もれた。

 

二人が亡くなった冬は、いつになくたくさんの雪が村に降ったという。

 

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昔話を少しアレンジしてあるらしいが、吹雪の効果音や俳優による上手な語りで、すっかり私自身その世界に入り込んでしまった。