読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

善と悪

寒い寒いと言われていたけれど、それほど寒くない今日。夕方4時に銀座のクリニックで3ヶ月分のクスリを貰うアポイントもあり、どうせならまとめてと思って、朝から渋谷のインディーズ映画館に足を伸ばした。

 

ル・カレ原作の映画「A most wanted man」を見るためである。原作はつい最近読み終わったのだが、秋口に公開されたこの映画、新聞を読まないので、今どんな映画が来ているのか知らず、見逃したのだった。というより、ル・カレを本格的に読み出したのが最近なので。

 

期待にたがわず良い映画だった。ただ、原作のじっくり積み上げるようなテンポよりずっと物事がサクサク動いているので、原作とは違ったイメージである。が、ドイツの上部組織のおぼえがめでたくない、一匹狼的諜報チームのチーフ、ギュンターを演じるフィリップ・シーモア・ホフマンがとてもよかった。彼以外にこの役は考えられないだろう。遺作になったわけなので、感慨も複雑である。

 

小さいことだが、原作にはまったくそういう記述がないのに、神経を尖らせる日々の仕事のなかで、ワンシーンだけ自分のアパートに帰り、ホフマンが電子ピアノを弾くシーンがある。映画版で付け加わったのだろうか。

 

最後は裏切りで終わる、苦い映画であるが、「正義」のためと説得されて、子どもは父を裏切るわけだし、上部組織はバッハマンのある意味人道的オペレーションを最後に台無しにする、虚脱感の残る終わりかただが、そのバッハマンにしてさえ、あらゆる「人道的でない」手口を使って、より大きな「大義」のために動いているというわけであり、いろいろ考えさせられてしまった。

 

善人も悪人もいない、皆灰色人の世界である。私の「世界観」も少し変わった。なぜ、自分はこんなにも長らく「正しくあろう」としてきたのだろう…?

 

帰り、頻脈の発作で電車ホームで立っていられなくなり。最近心労甚だし。

広告を非表示にする