葉山と渋谷

昨日は、葉山の美術館での金山康喜展の最終日だったので、ふと思い立って葉山まで出かけた。金山は若くして亡くなった富山の画家で、あまり知られていないが、半ば伝説的な人。カーテンを引いてローソクを灯していつも制作していた。ローソクの火のカーテンへの引火で亡くなったが、詳細は不明だ。彼の絵にはローソクがよく出て来るし、独特のブルーの画面が支配的な不思議な静物画を描いた。

 

逗子からのバスで、南米から一時帰国しているという女性と一緒になり、話をしているうちに、彼女が鎌倉の近代美術館にも寄るというので、同道した。湘南の画家たちという企画展だが、海外にいると日本の洋画を見る機会がないので、とても嬉しいと、食い入るように見ていた。日本の洋画も好きなものはあるけれど、本国ではいつでも見れると思ってしまうので、貴重な視点を貰った気がした。

 

葉山の美術館は不便なところにあるが、元高松宮別荘であったため、海をのぞむロケーションが素晴らしい。枝振りのみごとな五葉松はここがかつて宮邸だったことを偲ばせる。終日、ザーーッ、ザーーッという寄せては返す潮騒の音がひびく。

 

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さて、家のリビングのカレンダーには、満開の吉野山の桜の写真に添えて、万葉集天武天皇の御製が書いてある。

 

 よき人の よしとよく見て よしと言ひし

 

       吉野よく見よ  よき人よく見

 

吉野の分水(みくまり)神社に行ったときに、その古さびた趣にこころ惹かれたが、その入り口近くに役行者の石像のようなものがあったことを思い出す。

 

今、役行者に関する本を読んでいるのだが、母の夢のなかで雲から降りて来た独鈷が母の口に入って、妊娠したとか、生まれた時から神光を放っていたとか、ただならぬ香りが誕生時からしたとか、生まれながらにして博学であったとか、不思議な話ばかりだ。

 

天皇の子だという説もあれば、謀反人の子どもだという説もあり、独鈷の夢のように、父親がないという説もある。いずれにしても、葛城あたりの豪族であって、賀茂一族に連なる家の出のようだ。

 

天武天皇大友皇子に殺される危険を避けて、吉野に入って出家したわけだが、大友が攻めてきたときに、最終的に勝つことができたのは、金峯山寺に祀られている祭神、金山彦や役行者の助力によったのでは、というのが著者の推測である。金山彦というのは、鉱山や山、土木業などと関係する神だが、鉱山仕事などをしながら修験の修業をしたのが金山彦の正体ではないかと著者は見ていて、役行者もそれに近かったのかもしれない、とも。

 

だから、「神」の助力で天武は壬申の乱で勝ったと『宇治拾遺物語』などではなっているが、実際は、武器を持った吉野の強力な軍団の助力を得られたということのようだ。

 

役行者天武天皇の結びつきは強く、だから、その後、呪術を使ったということで、大島に島流しになることも、天武時代の終わりと無関係ではないだろうということだ。朝廷がいわゆる超能力を持つ、しかも土地の豪族である役行者を危険視したのは当然だろうし、讒言したのは、「一言主」だということになっているが、これもまた、その地の敵対勢力の一族であるようだ。

 

空を飛んだとか、不思議な話が多い役行者だが、こうやって歴史や権力の変転のなかで見てみると、それはまた別の面白さがある。

 

宗教はご利益ではないと言われるが、イエスも病気治しをしたわけだし、昔のひとにとっては、修験者というのは、子どもの病気を治してくれたり、雨乞いをしてくれる生活の守り手だったのだと思う。

 

役行者は、この近く、秩父にも来ていて、ゆかりの神社などがあるようだから、一度訪ねてみたいと思っている。

 

そんなこんなで、またK学院大に登録しようと思っていたら、今年はもう締め切りが早まって終わってしまっていたので、大学エクステンションの一般向けの講座に出ることにして、今日は大学へ久々に行って来た。神道と周辺の関係ということで、仏教、儒教陰陽道修験道などとの関係を講じる講座が折よくあった。

 

組織化された宗教はどれをとっても、やはり組織の維持のために歪んでしまいがちである。最後は官僚主義に堕す。古い伝説や妖術使いの話のなかに、なにかひょっとしたら、原石のようなものがあるかも、と思ったりする。

 

大学は春休みで静かだった。2012年の春ごろに来たのが最後だったので、もう3年も経ったのだなあ、と思いつつ、安くて結構美味しいカフェテリアで、来し方行く末を考えた。

 

帰途は、渋谷駅まで歩き、途中、金王神社に寄った。名高い金王桜はまだ蕾だった。

ここを拠点としていた、渋谷一族は北条氏に滅ぼされたのだという。ここも、「つわものどもがゆめのあと」か。以前はここによく猫がいたものだったが。

 

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渋谷界隈の桜

 

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