強固な壁に囲まれた小さな街。人間から「影」を引き剥がして、こころがなくなった人々が静かに住んでいて、獣たちがゆっくりと行き交っている。獣たちは秋になると黄金色の毛並みに変わり、冬になると飢えと寒さのために死んでいく。獣は一角獣。リンゴ林で焼かれた獣の頭骨は人々の古い夢の貯蔵庫となって、図書館で主人公は「夢読み」となる。
どこかで自分も知っているような不思議な街。獣たちの諦観に満ちた碧い眼、森へ追放される影を捨てきれなかった人々、獣を焼く煙が真っ直ぐに分厚い雪雲の方へたなびく冬の日々。生きているような壁。街にはもはや争いも失望も苦しみもないが。
この半月ぐらい毎日この物語を読んでいた。「世界の終わりと・・」のタイトルにふさわしく大晦日に読み終えた。Haruki Murakamiが85年に書いた作品。