
金木犀は花芽がついてから、翌日にはもうかなり開花が進んで強い香りを放つようになった。そんなところに台風が続けてやってきている。当地は被害はあまりないが、伊豆諸島の方は電気や水道も途絶えて大変だ。
昨日、古本屋で書棚を見ていたら、『アナスタシア』という以前私も読んだことがある、著者がシベリアの奥地で出会った、シャーマンのような不思議な女性のことを書いた本が出品されていたので、そのシリーズの、読んでない2冊目のをパラパラめくってみた。
著者ウラジーミルが若い時に出会ったフョードル神父というセルギエフ・ポサードにある聖セルギー修道院の思い出が書いてあって、ちょっと驚いた。私が読んだ一冊めは、いわゆるネオペイガンというか、フラワーワーチルドレン的な本だったからだ。
著者は20代の頃、修道院を度々訪ねてフョードル神父と話をして、当時、修道院でフョードルが権威的な立場にあったのか、普通は入れないような、院の宝物庫にも案内してもらったりしている。が、ある時からバッタリ訪ねていくことはなくなった。
それから幾星霜。再び院を訪ねるとフョードル神父は院にはおらず、近くの森の小屋で隠者のような生活をしているという。会いに行くと、神父は若返っており、元のフョードルは死んでどこそこの墓地に葬られていると言うが、著者には理解できず、同じ人のようにも思える。ただ、再会の際に共にした食事のポテトの味は、とても美味しいポテトで感激した昔と同じ味であったという。
その庵はまったく貨幣経済の圏外にあるようで(まあ、庵と言うのはそう言うものかもしれないが)一切お金のやりとりがなく、蝋燭なども売っていないのだと言う。
このシリーズ本が書かれたのはソ連崩壊後の世情の中であり、そんな不安定な社会の中で拠り所を求める人たちの心情にアピールしたのか、ベストセラーになった。その後海外でも爆発的に人気が出た。
フョードル神父に再会した著者は、ロシアにはこんなに素晴らしい長老たちがいるのに、なぜ彼らは口を開かないのだろう、今のロシアには外国から様々な宣教師がやってくるが、彼らが足元に及ばないような宝を長老たちが持っているのに・・・と書いている。
帰宅して調べると、『アナスタシア』に啓発された人々は「アナスタシアン」と呼ばれ、「アナスタシアニズム」と言う言葉まであるのだと言う。そして、コミュニティを作って暮らしているので、ヒッピームーヴメントに近く、オーガニック農業礼讃や絆の強調、伝統回帰などの特徴があるようだ。そもそもの話、著者が出会ったアナスタシアが実在の人物であるかもはっきりしていない。けれど、ロシアには森林地帯に逃げ込んだ古儀式派の伝統もあるので、ありそうな話でもある
フョードル神父の話はあるけれど、ロシア正教会はアナスタシアニズムを当然ながら、全否定しており、敵対している。
この日、たまたま本屋で見つけた本で、ルーマニアの呪術のことが書いてあり、ルーマニアでは村の司祭が腫れ物を、魔女的な治療師の女性などに治してもらったとか、公には魔術や呪術を否定しているが、境界が曖昧になっているらしい。司祭がお礼なのかわからないが、腫れ物を治してもらったあと、痛悔の後に課すカノン(懲罰)なしになったとか、笑える話でもあった。
正教会ではスペインなどの苛烈な異端審問とは違って、異教的なもの、土俗的なものに対する規制は緩かったと言える。
11月にイヴェロンの扉の生神女イコンがホノルルから日本にやってくる。本当は20年に来日予定だったのが、コロナで中止になっていた。メインのお披露目は献堂の周年記念の京都であるが、東京にもお立ち寄りである。
以前、クルスクの木の根の生神女のイコンが来日した時、私も拝観したが、ちょっとよくない印象のセレモニースピーチがあったので、今度もお目にかかりたいけれど、悩むところである。在外ロシアの方がこうした遺物を持っているが、在外も在内も区別がなくなってしまったし・・・。
このイコンの元はモントリオールにあったものだが、その守り手はアテネで殺害されて、イコンも消えてしまった。モントリオール版が消えてから、ホノルル・バージョンが聖油を放つようになった。消えたイコンはどこへ持ち去られたのだろう。
守り手のホセ修道士(元カトリック)の殺害容疑者は証拠不十分で不起訴になったが、ルーマニア人である。
マザー・テレサとよく一緒に活動していたスイス人のプロテスタント、ブラザー・ロジェも殺害されたが、犯人はルーマニア女性の精神病患者である。
ルーマニアは民俗調査の宝庫と言われるほど、いろんな習俗(呪術、まじないも含め)が残っているのだそうである。そういう土着の禍々しいものが、いろんな事件を引き起こすのかなと考えたりする。
ホセ修道士が元カトリックだし、ブラザー・ロジェはテゼ共同体というエキュメニカルなコミュニティの創始者だったので、ひょっとしたら、原理主義的正教会信徒か・・と思ったり。