今年の桜はとても不思議だ。開花宣言からずいぶん経って、ものすごい嵐や雨もあったにもかかわらず、まだかなり咲いている。なにしろ、たいへんな風で、ガラス戸がミシミシいう風は、ここへ来て初めて体験するものだった。
この団地のなかでも、落花で絨毯になっている並木道があるけれど、それでも、花が枝にしっかりついているのか、まだまだ見ごろである。「花も嵐も踏み越えて…」という歌を思い出す。なにかしら、芯の強さというものを感じさせる今年の桜。
嵐で落花していた枝を拾って、空きビンに挿してみた。静かに桜を眺めながら、こころ穏やかに過ごしたい。
いつの日か、「そういえば、あの年の桜は格別だった」と回想することになるのだろうか。
翁に、「この世の中」という題の、ごくごく短い詩がある。
「かぜに おとされる
あめに ながされる
どろに よごされる
あしに ふまれる
かわいい さくらのはな…」
今年の桜は、「かわいい」だけでなく、強い花だ。
何度もの嵐に耐えて可憐に咲いている。