猫写真展

猫写真展は初日だからか結構混んでいた。猫自体も魅力的なのだが、この岩合さんという写真家の持ち味は、猫のいる風景、暮らしということがむしろテーマのような感じがした。だから、写真によっては、「え、どこに猫いるの?」と思うぐらい、風景のなかの点景だったりもするのだが、それはそれで面白い。

 

ギリシャ、イタリアを皮切りにトルコ、モロッコ、アメリカ、最後には日本各地で撮った猫のいる風景だが、ギリシャ、イタリアの猫風景は割合観光写真などにもあるので見慣れているが、むしろアメリカのものが新鮮だった。

 

最初のは、大雨か何かの後だろうか、ミシシッピ河の河川敷(というのか川原というのか、泥の筋が走っているような)を横切る猫の後ろ姿で、風景も猫も茶色のなかに溶け込んでいて、印象的だった。

 

アメリカのは、キーウェストで撮ったものが多く、ボートハウスで働く初老の女性が猫と暮らしていて、ひとりと一匹の暮らし、というキャプションがついているもの。

小さな家の前に腰掛けた女性と、その前にきりっと足を揃えて座っている猫。この一枚は彼らの暮らしを彷彿とさせ、構図的にもシンプルでとてもきまっていて素敵だった。

 

もう一枚は、ウッドデッキのようなポーチで女性がロッキングチェアで読書していて、

その膝に丸まっている猫。若い女性のブーツを履いた足やデッキ、猫のコンビネーションが絶妙。

 

日本のものは四季に分けられ、季節ごとの猫のありようが手短に説明されていて、

桜の花と猫、木瓜の花に鼻を寄せる猫とか、春は花。夏は元気に草原などを馳け廻る姿。秋は猫もなにはなし憂愁を感じるようなことが書いてあったが、そうなんだろうか。

 

猫はこたつで丸くなる、と歌われているが、結構冬は元気という解説で、青森などの

雪景色のなかの猫もいろいろあったが、雪と猫がこれほどマッチするとは意外だった。

猫の顔にかかった雪の粉の儚さ…。

 

巷は空前の猫ブームで、本屋にも猫コーナーがあり、「人生ニャンとかなる」というタイトルなどの、猫の写真を使ったセラピー本や猫に学ぶといった本も多い。可愛い写真だけに癒されているのではない、猫の哲学みたいなものに人間のほうが惹かれているということなのだろうと思う。

 

人間のように何かに執着するというようなこともないし、未来を憂えるのでもなく、

「今」を存分に生きている猫たち。

 

そういえば、皇室写真には犬はいるけれど、猫は見かけたことがない。気ままなニャンコとは相性が悪いのかな。大奥あたりには、たくさんいたんじゃないかと思うけど。