いま道長

国連女子差別撤廃委員会が3月7日に発表した報告書の最終案で、男系男子による皇位継承を定めた日本の皇室典範女性差別にあたるとして、見直しを求めていたことが、昨日テレビなどで大きく報じられていた。官房長官がテレビでこの件を語る映像が流されるほど、ニュースバリューがあったようだ。

 

国連女子差別撤廃条約とは;

https://www1.umn.edu/humanrts/japanese/Jcedawopprot-2000.htm  )

 

それぞれの国に固有の文化や伝統があるという理由で、日本政府が今回の報告書に強く抗議し、結局、見直し勧告の内容は削除された。

 

人権を盾にとった国連らしい内政干渉という印象があるが、調べてみると、日本は国連女子差別撤廃条約を1985年に批准しているが、当該委員会に差別を通報し、調査をおこなうことができる選択議定書については、日本は未だ批准していない。OECD諸国ではアメリカも選択議定書は未批准である。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/seigan/186/yousi/yo1862235.htm

 

女子差別は原則なくしたほうがいいに決まっているのだが、ちょっと調べていると、この条約締結時の外務省の条約局長が小和田恒氏であった。

 

そのころからシナリオができていたのかどうかはわからないが、これでは天皇外戚として権勢をふるった藤原道長が実はグランドシナリオを書いているようなものである。地方などでまるで準皇族のように振舞っていることも常々批判されているし、ハーグの国際司法裁判所の判事から所長へと9年の長い在任。それ以前でも、外務省事務次官ののちは、駐米大使を希望していたらしいが、さすがに東宮妃の親ではまずいということで、国連大使で我慢してもらったという噂もあったりする。

 

さらに、今回のニュースは二年前の春の、東宮家内親王の作文を思い起こさせた。

http://news.livedoor.com/article/detail/8641447/

当時この記事を読んだ時、小学生の文章ともまた関心事とも思えなかったし、彼女の祖父が道長を彷彿させることもあり、悪い冗談のように思ったものだ。

 

また、昨日は、東宮ご一家が映画のチャリティー試写会にお出まし、というのがヤフーなどのニュースに流れていた。東宮の趣味の登山映画であるし、且つ、主演のジャニーズ系俳優と一緒に鑑賞したという、専制君主さながらのわがまま放題である。さらに、皇太子は翌日のオペラ鑑賞とこれだけが、今週の公務?であるようだ。

 

男系男子であろうとなかろうと、皇室全体が要らないと私は思っている。ましてや、こんな風に、愚かな人たちがいれば、外部から利用されて国全体がおかしくなったり、あるいは古代のような兄弟間の帝位争いみたいなことになれば(実際ネット上では両方のシンパが争っている記事が多数ある)、ますます国益を損なってしまう。

 

だいたい、王族、皇族は歴史的にも血で血をあらう争いを繰り返してきたわけだし、勝者かもしれないが、人間的には下の下の類であろう。

 

昨日、今年度の芸術選奨(芸術分野における文部科学大臣賞)の発表があり、私が常々うまいなあと思って感心している、乙川優三郎という直木賞作家が選ばれていて、これは納得だったが、受賞理由になった作品は、東日本大震災を扱った人間模様のものであった。が、実はこのひとがすごいのは、「脊梁山脈」という数年前の作品で、これは一見恋愛小説みたいな感を与えるのだが、実はここに隠された皇室批判が埋め込んである時限爆弾みたいな作品なのである。

 

主人公は生きる目的をなくした若い復員兵。復員列車のなかで、東北出身の男に会って感銘を受けるのだが、彼は木地師の家系のひとであった。伯父の遺産を相続して急に裕福になった主人公は、その男との再会を願い、木地師の在野研究者となるべく、山あいから山あいへと旅を重ねていく…。というあらすじなのだが、今は数少ない木地師の集落を訪ねていくうちに、日本の皇統に関しての詐術を発見し、ひとりで新たな皇統譜をつくりはじめる。

 

これが最終的にどうなったかは書いてないし、そのあたりはさらりとしか書いてないので、あまり注目するひともいないようだが、中大兄皇子皇位簒奪者であり、蘇我氏滅亡について歴史に異議を申し立てている。日本書紀は「偽書」であり、歴史の改ざんである、と。聖徳太子についてもかなり大胆な仮説を出しているが、物語の人物の考えであるから…と、トンデモ扱いされないで読まれるのであろう。

 

芸術選奨については、前年の業績に対しての賞であるようなので、乙川氏も大作である「脊梁山脈」でなく、震災関連の短編集で受賞というのはわからないでもない。が、短編集は読んでいないのでなんともいえないが、爆弾搭載の大作の作家を、国家の賞を与えることによって、懐柔しようという狙いの印象が、深読みかもしれないが、ないでもない。(国家による芸術家への賞に対しての批判は結構過去にもあり、受賞を辞退した作家たちも少なからずいた。http://naokiaward.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-9b76.html

 

 中大兄がともに陰謀をかたらったのが鎌足であり、彼が藤原氏一統であることを考えると、昨日のニュースのすべてが、レンズの焦点のように光を収束させそうである。紙をも焦がすかのように。