都内ではハクモクレンが咲いたそうで、ハクモクレンが咲くと、10日ぐらいして、桜が開花するのだそうだ。家の近くではずっと梅が咲いているが、桜の季節も近い。「彼岸過ぎまで」という言葉があるぐらい、お彼岸を過ぎると、一足飛びに春がやってくるのは毎年のこと。
一ヶ月ぐらい前、大きな書店に行った際、新刊のディスプレイを見ていたら、先の天皇に関する本が他の新刊といっしょに飾ってあって、ぱらぱら見たところ、結構ビックリの内容で、と言っても、だいたい知っているようなことだったので、買うほどのこともないだろう、と思ってそのまま帰った。
というのは、天皇についての裏情報や歴史改竄云々というような書籍は、だいたいトンデモ本の類いに分類されて、こんな大手の大書店に堂々とディスプレイされることはないからだ。
その後、アマゾンでのレビューがあるかな、と思ってのぞいてみても、レビューはなかった。
まったく偶然だがその二三日後、その大書店は、その持ち株会社のトップが替わり、本の流通の二大大手のライヴァル社のひとが就任したのが一因でもあるらしく、閉店するニュースが流れて、皆ビックリしたものだ。いわゆるお洒落系の大書店で、いつもお客が立て込んでいたからだ。とはいえ、ネット書店の繁栄のなかでは、こういう老舗も経営が大変なんだろうな、と思ったことだった。おそらく、「この本」とは関係ないはずだ。
その後、その書籍をやっぱり買おうかなと思い、アマゾンを見たら、一ヶ月も経たないうちに、古書のみになっており、楽天とか紀伊国屋、hontoなど、大手オンラインストアでは軒並み、「取り扱いできません」になっていた。
唯一アマゾンでは古書で出ているけれど、高いし馬鹿らしいので、日本の古書店サイトを見たが、そこも一冊も出ていない。
それで、クロネコヤマトのブックサービスというニッチなところで、ようやく普通の価格で買うことができた。
どこかで、この本が問題視されて、圧力がかかったのだろうか?もともと、保守系の月刊誌に連載されていたものをまとめたものということなので、問題があるなら、連載中になにかあってもよさそうなものなのだが。
書籍化されたほうも、バリバリ右派の出版社からなので、普通に考えると、これら、隠し財産の話しとか、先の天皇は後年言われたほど、平和主義者ではなく、軍部の言いなりになっていたわけではない、という著者の主張は、どこか左派的でもあり、不思議でもある。
興味深いのは、開戦前の9月の御前会議で、天皇が明治天皇の有名な御製「よものうみ…」を引いて、話したというところで、明治帝の「波風」とうたわれている部分を、会議では、「あだ波」というふうに、替え歌というか、本歌取りのようにして、朗詠したということを、いくつかの記録から導いていることだ。
天皇に関しては、私はマッカーサーとの会見での美談やら、寺崎メモなども、そのままは信じていないが、歴史を改竄したものがあまりに多いらしいことを感じると、うすら寒い気がする。
最も不思議なのは、この著者がどういう意図をもって、この本を出版したか、ということである。著者の妻は作家で、皇室関係の本もいろいろ書いているし、しばらく前に亡くなったヒゲの殿下を書いたものなど、読む方も恥ずかしい、ヨイショ本であった。
週刊誌がセンセーショナルに取り上げるのは、実は「報じてもいい」程度の話しなのかもしれないし、そうでないものでも、ネットには上がっていたりするのだが、この本の帰趨の不思議さは、誰も何も言っていないようである。
(そういえば、この作家夫妻は、関東大震災で朝鮮人の暴動は実際にあった説の本を書いていたりした)
つまりもう、誰かが右派だとか、左派だとか、言うことがほとんど意味のない、カオスの時代に突入したということなのだろう。