贈り物

昨日はスーパームーンということで、午前3時の最大の大きさの時は、さすがに寝ていたので見過ごしたけれど、夜になって、月をしばし眺めていた。時間が経ったけれど、やはり少し大きめで、ひどく明るい。明け方は巨大な月だったらしい。

 

ふと、思い出した。先日、神保町の古本屋で、ルーマニア正教会の主教だったかが書いたマホメットの伝記が外のワゴンにあって、安いので手が伸びて、レジまで持っていった。普段私があまり入らない本屋で、国文系の書籍がなかにぎっしりあった。

 

たまたま、三島由紀夫の棚が眼に入って何気なく見ていたら、三島というタイトルではなく、「関の孫六」というタイトルの小さな新書が最後の列にあった。カッパブックスなので、どうせセンセーショナルな本だろうと思い、ぱらぱらとめくってみたが、なかなか怖い本で、もちろん買わないし、のぞいた程度だ。

 

驚いたのは、三島が事件で使ったあの有名な日本刀の「関の孫六」が、自分で買ったものではなく、本屋の大盛堂の社長から贈られたもので、その贈り主が著者である。とんでもない贈り物だ。

 

著者は事件の現場に、警察から呼ばれて、刀の検分をさせられたということだが、その時に、はっきりと、「これはこの孫六が起こしたことだ」というのを、肌身で感じて全身が総毛立ったということだ。

 

鑑定書がある名刀なのだが、何代目がつくったとか詳しいことは分からないらしい。

律儀な三島は、鑑定書も現場に持参していたらしい。

 

その後、「名刀」は、事件に関わった器物として、押収、廃棄される運命にあったのを、三島夫人が奔走して、引き取ったということだ。

 

 漏れ聞いた話では、一説には、孫六旭川にあるという。もちろん、人知れず…ということなんだろうけれど。旭川にこのsinisterな「怪刀」があることは、存外知られていないのではないか。(もちろん「あるらしい」という話なのだが)