引越し

うだるような暑さの日が続く。午後からは連日、天気が崩れて降雨や雷鳴。

 

昼食後、駅前のスーパーに行くので階段を降りたら、引っ越していった猫のおばさまのお向かいのドアが大きく開かれていて、制服姿の作業員みたいなひとたち3人ほどがせわしなく出入りしていた。入り口で掃除機をかけているひとがいたりする。

 

このお宅は私が3年前に来たころ、おじいさんとおばあさんが住んでいて、おじいさんは認知症の気があるらしく、そのうち見かけなくなった。どこか施設へ入ったのだと思う。

 

残されたおばあさんも体が丈夫でないらしく、買い物の荷物を重そうに運んでいたことがあるので、入り口あたりまで持っていくのを手伝ったことも、一、二度あった。

 

そのうち、おばあさんの姿もみかけなくなった。去年の夏より前だったと思う。

 

猫のおばさまの話では、おばあさんはやはりどこか介護施設に入ったということだった。それでも、家はそのままで、時々息子さんが来て、郵便などをチェックしていたという話だったが。

 

買い物の帰り、大きなトラックが止まっていて、巨大なゴミ袋がたくさん積み込まれていた。

 

ああ、これが最近よく言われる、一切合切まとめて処分する、「処分屋」なんだなと思った。一種の廃棄物業者で、仏壇も神棚もゴミもまとめて捨てるという話もきいたりした。多分おばあさんは亡くなったのだろう。

 

通りすがりにちらりと見えたこの家の玄関タタキはものすごく古いコンクリートのようなもので、おそらく40年前の立てられた当時のままの感じだった。この夫妻はずっとここで暮らしていたのかもしれない。出入りがあるとリノベーションするからだ。

 

息子さんにとって、きっと価値あるものは何もないとしての、業者による一括処分だったのだろうが…。最近は結構こういう依頼があると聞いた。

 

ちょっと荷物を持っただけだったが、丁寧にお礼を言って恐縮するおばあさんの、昔気質というか、ひっそりとしたたたずまいを思い出した。

 

急に階下がいっそうしんとなったみたいだ。変化の夏。