猫の島

明日にかけて全国的に大雨という予報で、関東地方はあまり影響がなさそうだが、九州あたりはもうかなり降っているらしい。もうそんな季節になったのだなあ、と。

 

今朝は、石巻の沖合にある猫の島「田代島」をテレビでレポートしていた。知らなかったが、猫好きの聖地ともいわれ、外国からも観光客がやってくるのだそうである。今朝の番組でも、アメリカからやってきたという青年が、もう何回目かになると語っていた。

 

猫たちは自由に島のなかを往来し、港で漁師さんたちにとれたての魚をもらっておいしそうに食べている。それも、売り物にするもののなかから、ひょいとつまんでもらっているので、たいそうぜいたくである。

 

しかし、のんびりとして見えるこの島も、東日本大震災では津波の被害をもろにかぶり、漁船は壊れ、港も破壊されてしまった。東北全体で、復興工事のため建設関係の人手不足が深刻で、ここの港も半壊したようなままの姿で、手当が間に合わない状態である。

 

おじいさんの漁師さんがインタビューに答えていたが、重い口調で、「震災のときのことはあまりしゃべりたくないんだわ」と言いながら、沖合をじっと見つめていた。

 

この漁師さんも以前は港でいつも10匹ぐらいの仲良しの猫に魚をあげたりしていたのだそうである。

 

それが津波で漁師さん自身も流されて九死に一生を得たのだが、猫たちも行方不明になったのだという。

 

「みんな昼寝してたんだと思うんだよね。仔猫もいたんだ…」

 

ちょうど午後2時半ぐらいだったから、そうなのかもしれない。漁師さんの顔が翳る。

 

津波のあとしばらくして、真っ黒な猫がこの一人暮らしの漁師さんの家にきて、居つくようになったのだという。

 

「親猫が死んだもんだから…」と漁師さんはいっていたが、真っ黒で目だけがピカピカしているので、「フクロウ」と呼んでいるのだという。撮影の朝、漁師さんは自分のおかゆをつくって食べており、フクロウには、まぐろのブツ切りがどんぶりに盛られて

差し出されていた。

 

猫のほうがいいものを食べてますねえ、などと、レポーターが言っていた。

 

漁に出かける漁師さんのクルマを「フクロウ」はいつも途中まで追ってきて、お見送りするのだそうである。

 

「フクロウ」はずっとクルマの後ろ姿を見つめていた。

 

震災はひとのこころにも、動物たちのこころにも爪痕を残したが、新しい出会い、生活もまた生まれたのだなあ、と、こころに響く映像だった。