艦上スピーチ

 夜が明けるのがだんだん早くなり5時にはもうかなり明るくなっている。

 

今日あたりが、八重桜が満開。一週間前ぐらいは、まだ茶色っぽい芽吹きだった欅の梢も、鮮やかな黄緑色を日ごとに増している。

 

最近は勉強を兼ねてよくニュース映像を見るのだが、昨日来日したペンス副大統領がロナルド・レーガン艦上でおこなったスピーチというのを聞いていたら、20分ちょっとのスピーチでfreedomという言葉が少なくとも20回ぐらい出てきたのではないかという印象だ。

 

https://www.dvidshub.net/video/519883/vice-president-pence-aboard-uss-reagan

 

拍手がパラパラという感じではあるが、それがまた自然な感じだった。もし、要所要所で嵐のような拍手になったら、それはそれで独裁国家のようで恐ろしくもある。私は、むしろ、このパラパラ拍手に自由主義国家のfreedomというものをリアルに感じた。帽子の陰ではっきりとは分からないが、兵士たちの表情にも。そこにはちょっと退屈したりする「人間の貌」がある。

 

翁が亡くなる前年に幻の祖国へ旅して、どんな印象をもったのか私は知らない。どこの町を訪ねたのかも知らないが、何も伝わってこないところを見ると、多分あまり芳しい印象を持たなかったのかもしれないと思う。

 

私はかの国へ行ったことはないが、ヨーロッパへのトランジットでモスクワの空港へ降りたことはある。1970年代だからもちろんソ連時代であり、暗い照明の空港と警備をするたくさんの兵士たち、たしか手荷物検査も軍服の担当官だった記憶で、何も問題はないはずだが、軍人が大勢でとても緊張したことを覚えている。

 

薄暗いロビーでは、掃除のおばさんがだるそうにモップをかけていた。

 

もちろん今ではそんな雰囲気ではないのだろうし、一党独裁旧ソ連とは異なり、政党政治をおこなっているわけだが、それでもある種強権的な政治がおこなわれている印象は否めない。

 

翁は巡礼というだけあって、もちろん教会や修道院に行ったのだろうが、そこでも「なにか違う」と感じたのではなかったか。

 

改めて、freedomとは、人間が人間らしい顔をできる、ということなのだな、と感じた日だった。