黒宰相

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春らしくなってきた。もう冬は終わりのはずなのに、山茶花がまた猫が原でちらほら咲き始めた。このあいだまでは、枯れ始めていたのに。気温のアップダウンに植物も戸惑っているのだろうか。

 

このところニュースが、安倍首相夫人が名誉校長を引き受けていた(騒がれてのち辞任したが)大阪の国粋的教育をする小学校への国有地払い下げ問題一色であったが(政治家の口利きがあったかどうかが争点)、今日の夕方5時半から、その学校の理事長籠池氏が記者会見をした。午後早い時間での会見の予告では、学校の認可申請を取り下げ、自身も理事長を辞任するということだった。

 

ところが。会見の内容は持論の教育論を延々話し、メディアの取材でこの一ヶ月まったく仕事にならなかったことなどを、述べ立てる内容だったが、20分ぐらい話し、これから質疑応答などがあるのかな、と思っていたら、いきなりニュース速報が流れ、NSC自衛隊南スーダンPKOから5月に撤退する決定をした、ついては首相が緊急会見ということで、籠池理事長の会見が途中なのか、終わったのかもわからないうちに、慌ただしく首相会見に切り替わった。

 

自衛隊南スーダン派遣については、安保法制が施行されたために新たに「駆けつけ警護」の条項が加わって、隊員の人命への危険がリアルなものになったために、反対の声が大きかった。にもかかわらず、政府は、現地は戦闘状態にはないと一貫して主張、実際はほぼ戦闘地域といってもいい状態だと言われている。

 

なので、この撤退自体は大歓迎だが、驚くのは、この小学校スキャンダルの渦中のひとの会見のタイミングで、撤退の決定をぶつけた姑息すぎるやりかた。誰が見ても露骨すぎるだろう。

 

安倍夫人に対する非難はとどまるところを知らず、週刊誌なども一斉に叩き出したため、自身の政権維持とイメージアップのためにこんな決定を急に持ち出したのだろう。

その「恣意性」、政治を自分の利益のための道具に使うやりかたには呆れるばかりである。

 

夫人は、たとえば、原発政策では夫と反対の立場をとり、また、沖縄のヘリパッド敷設反対運動の現場へ行ってみたり、夫より先に夏休みにひとりで真珠湾に行ったり、とか独自の行動をしていることで知られていて、私は一種の、反対派懐柔のための煙幕的別動部隊かなと思っていたのだが、そんな頭脳的戦略があるというより、単細胞のおバカさんだったということが、今回の対応を見てわかった。突然、くだんの小学校のホームページから、名誉校長の部分を削除してみたり。(今はスクリーンショットで保存しているひとがいくらもいることを知らないのかどうなのか…。)

 

学校の方針に共鳴して名誉校長を引き受けたのなら、それを貫けばよかったのに、「あまりつきあいはない」とか、教育勅語に心酔している割には、信義にあつくない行動をとって見苦しくもある。

 

それにしても、自衛隊の派遣という重要な問題を、自身のスキャンダル隠蔽に使うとは…。もし、この学校問題に関して潔白なのであれば、こんな姑息なやりかたをする必要はないわけである。却って、やはり何かがあったのだと思いたくなる。いや、あったのだろう。表に出ては自身の失脚につながるようなことが。

 

学校の認可申請取り下げなども、理事長が裏で言い含められたのだろう。同じ学園の幼稚園のことは前から知っていたが、虐待まがいのしつけまで行われていたことは、今回はじめて知った。ちょっと話せば、この理事長夫妻が定見も教養もない、すこぶるつきの下品なひとたちだということがわかるはずだが。

 

首相が焦るには理由があると思う。彼は自民党の綱領も今回改正して、総裁三期も可能にした。オリンピックを我が手でやりたいのだろう。が、この学校スキャンダルは国会で野党が追及しているだけでなく、与党のなかからも火の手があがっている。そうして、それらの議員は、おおむね、次期総裁に野心を持っているひとたちだ。

 

安倍夫人は、トランプ大統領夫妻とのフロリダでの会食でも、ひとりだけ大酒を飲んで(酒豪といわれる)、酒を飲まない大統領夫妻に呆れられていたなどとも、ぼろぼろ書かれるようになってきた。(首相自身も飲まない)

 

この夫婦が愚か者で利己的ということよりも、こんな風に、あからさまに、「できごと」を起こして報道をコントロールするということに、背筋の寒くなる思いがする。