雨模様の日。寒さがまた戻って来たような感じもある。
村上春樹新作の第二部を読み終わる。「えっ、これでおしまい?」といった、わりあい凡庸な終わりかたでがっかりした。第一部はそれなりに面白かったのだが。
主人公は、現実と非現実のはざまを行き来するような、ある種の冒険旅行(現実的には数日の失踪というか居所不明)をして、それまでの繊細な体質に加えて何か確信、自信を得て、より地道な現実生活に戻っていく。
具体的に言えば、この世ではないような世界で、狭い横穴のようなところを抜け出ることによって、閉所恐怖症を克服し、俗な言い方でいえば、一皮むけて帰還ということになるのだろうか。
彼の冒険でサポートをするのが、老画伯の絵から抜け出てきた「騎士団長」だったり、
絵に描かれている女性だったりするのだが、それらは、精霊みたいなものなのだろうか。また、その「試練」の際に、おまけのストラップみたいなちょっとしたものが「お守り」になる。
また、「お守り」は、そうした物質だけではなく、「試練」のなかのパニック状態で、
意識をそこに集中させる「何か」(記憶のなかにあるもの、飼っていた猫だったり、
思い出だったり)だったりもする。
私はゲームをしないのでわからないが、いわゆるロールプレイングゲームみたいな感じが読後感としてはある。こころの成長物語といえようか。
ただし、最終章はそれ以前のできごとから数年あとの、東日本大震災が書かれており、
唐突な感じがないでもなかったし、未消化な感じが否めない。
何かで読んだのだが、彼はあの震災のとき、ハワイに滞在していたという。そんな「距離感」を感じてしまった。
それでも、不思議な夢に悩まされたり、おかしな現象が起こる自分としては、どうやって、現実に錨をおろすか、という参考になったとはいえる。同類がいるのは、やはり安心できるというか。
あるいは、煎じつめていえば、危機的状況に陥ったとき、ひとは何を「よすが」にして生き延びる、あるいは生き続けることができるか、ということの、ひとつの回答かもしれない。