長門の雪

今日も、フリーザーに入ったような寒さで、おまけに風が強い。吹き飛ばされそうな風圧を感じたりした。かつては寒い日はあったが、こんなに風が吹くことは珍しかったのではないか。これからは、気象庁でも突風の注意報の出し方を変えるのだそうだ。

 

昨日、今日と、日本は日露首脳会談一色に染め上げられたといっても過言ではない。安倍首相が大統領ご一行を地元に招いて「胸襟をひらいて語り合う」ことを目論んだので、たいへんなフィーバーになったわけだった。

 

昨日、露政府一行が山口宇部空港に降り立ち、そこから山口長門市に向かうまでの車列もずっと中継。もっとも、オバマ大統領が広島に来たときも同じような中継ではあったが。

 

山口は昨日は雨。今日は朝から雪になり、雷なども鳴っていたそうだ。

 

しかし、安倍首相のセンスはなんだかとても恥ずかしかった。温泉で話し合えば、率直な意見交換ができて、距離が縮まるなんていうのは、まったく自民党の料亭政治のセンスであって、外国人にそれが通じるとは思えない。

 

 また、今日は、この会談で決まった経済協力などの合意文書の調印式と両首脳のスピーチが午後からずっと中継されたが、たくさんあるプロジェクトの調印文書が両国の担当大臣によって交換され、大臣同士、また首脳とも握手を交わすというのが延々十数件も続いてウンザリだったが、聞けば、この長ったらしい握手セレモニーはロシア側が希望したということだ。

 

前から気になっていたが、安倍首相は各国首脳と親しいことを強調したいらしく、誰でも自分のスピーチ中でファーストネームの呼称で呼ぶのだが、それを聞いている本人はどう感じるだろうか。違和感はないだろうか。

 

さかんに、「ウラジーミル、君は」と、「ウラジーミル」「君」を連発。とくにロシア人の場合、きちんと言うときには父称をつけるわけだし、ましてや、公職にあるひとなのだから、普通にプーチン大統領といえばよいのに、勘違いぶりがまことに恥ずかしい。

 

それに対する嫌味でもないだろうが、プーチンのスピーチは「親愛なる首相閣下」で始まって、あまりの落差に笑ってしまった。もっとも、同時通訳がかなり酷かったから、

実際どう言っていたのかはわからないが、いずれにしても、こういう場にふさわしいフォーマルな表現をプーチンは使っていたのだと思う。

 

もっと驚いたのは、両首脳スピーチのあとの、記者団からの質問タイム。日本、ロシアとも二人づつ質問に立ったが、これは事前に指名されているはずである。ロシア側からの一人目の質問者(女性記者)が、シリア情勢についてプーチンに質問したのだった。

今回の会談となんの関係もない内容である。

 

が、前もって決まっていたのだろう、プーチンは最初にちょっとにこっとスマイルを浮かべて(了解という意味ではないか)、延々とトルコがどうとか、シリアをめぐる説明を始めたのには、唖然としたことだった。

 

これはホスト国である日本を愚弄しているもいいところ。貴重な会談の質問の時間を使って、ある意味自国プロパガンンダをしたも同然であった。残念なのは、同時通訳があまりに酷くてプーチンがなにをいっているのかよくわからなかったことだ。(通訳もシリアの話題にはついていけなかったのかもしれない。北方領土関係の語彙なら事前にチェックしてあっただろうが)

 

安倍首相の感覚のズレぶりもひどかったが、改めてロシアのしたたかさを思い知らされたことであった。

 

 

日本人はお人好しだし、素朴過ぎるところがある。プーチンは、「普通のひと(女性らしい)が自分に寄ってきて、歓迎してくれて驚いた」と言っていたが、きっとロシア人なんて見たこともない長門のおばさんか何かだったのだろう。そういう純朴さは貴重なものでもあるのだが…。外交交渉となると話は別だ。