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小さな宝石箱

朝は冷え込んだが、さんさんと太陽が照ってきた。今日は穏やかな小春日和とか。

 

先日、駿河台の売店に寄ったとき、白い小さなブックレットがガラスケースの上にあった。何だろうと思って手にとったところ、山下りんの「ハリストスの復活」イコン展覧会の図録だった。すべてロシア語だが、扉を読むと、エルミタージュの極東分館(ウラジヴォストーク)で今年の5月から10月まで開催されたものらしい。

 

見本をパラパラめくってみると、B5判ぐらいの小さな冊子なのだが、実にシンプルで美しい造本で、カラー図版も結構あり、あと、デッサン、山下のイコンの所蔵場所(日本の各教会)、伝記(これも結構詳しいし、珍しい写真もいくつかある)、indexもきちんとついた、学術性も高いもの。しかも、1200円。迷わず購入した。

 

私は政治体制を棚上げすれば、かねがねロシアの教育や学術のレベルの高さには驚嘆することが多かったのだが、この丁寧なつくりの「小さな宝石箱」には、本当に感嘆するほかない。

 

日本では展覧会のカタログといえば、むやみとデータを詰め込んだ、漬物石みたいなものがほとんど。持ち運びも大変なうえに、最低でも2000円以上するものが、一般的だ。しかるに、この、すみずみまで神経がつかわれてつくられた美しい本が、この値段で買えるなんて…。もちろんもうちょっと高くても買ってはいただろうけれど。

 

まず、ページが輸送等で開いて傷まないように、薄紙(トレーシングペーパー)の帯封がきっちりとかけられていて、裏面はシールで閉じてある。このシールにある放射状の模様は、中の伝記部分にも薄紙の中扉表紙として使われている。

 

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図録の中身だが、展覧会のメイン「ハリストスの復活」。

 

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実はこのページのさらに前に、同じイコンが扉絵となっており、薄紙がかけられていて、蒔絵のフレームの部分の線描だけが、薄紙に載せられていて、重なるようになっている凝ったつくり。日本でも、昔は、よく高級本の扉絵などには和紙がかけられていたものだが。蒔絵の細かい模様がこれでよくわかる。

 

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この「復活」の他に、「洗礼」や「進堂」といったイコンがカラーで並び、そのあと、略伝、デッサン、その他が続く。

 

見本を開けたときに、まず眼に飛び込んできて、とても心惹かれたのが、この天使のデッサン。天使の清純さというものがよく表されていると感じる。画家の「心映え」がそこに読み取れないだろうか。

 

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「正教時報」の表紙画も描いていたことを知る。そのむかしは、月二回発行だったようだ。

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 夜更け、こころざわめくときなどに、この小さな手箱をあけて見ていると、こころが洗われる。

 

 

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