一夜明けて

昨日から急にまた一段と寒くなった。寒さにまだからだがついていかない時期なので、こたえる。数日前からエアコンの室外機が時々パタパタ音を出すようになったので、寒さに向かって壊れては困ると、サービスセンターから修理に来てもらった。

 

ここは樹木が多いので、葉っぱが室外機のすのこ状のカバーから入ったのが原因のようだ。しかし、葉っぱが原因では機械の故障ではないので、無料保証の適用範囲ではないという。が、機転のきくサービスマンが、磨耗ということで取り替えておきましょう、と室外機のファンも含めて部品を一部取り替えていってくれた。

 

昨日はそれ以外は、ずっとテレビに釘付けになっていた。これまでの大統領選でも、NHKがこんなにずっと開票速報を流したことはない。州ごとの開票結果を出す際に、

各州のプロフィール、酪農地帯だとか、衰退した工業地帯だとか、人種構成、これまでの大統領選での両党の得票傾向とか、簡単にまとめて流していた。なので、日本人にはとてもわかりやすかったと思うが、自国の選挙のときはただ票をカウントするだけか、

あるいは、出口調査で開票と同時に当選確実を出すか、という体たらくだったのに。

 

NHKが問題なのは、開票速報では、トランプの前に必ず「過激な発言で注目を集めてきた」という枕詞をニュースでつけること。また、当選確実になってからは、「政治の公職についたことがない、軍人でもない、初めての大統領」「歴代大統領で最高齢」、これら枕詞を連呼していて、こうした誘導報道に著しく違和感を持った。テレビしか見ない層は「刷り込み」されてしまうだろう。同じく経済ニュースで、「比較的安全な資産とされる円」が買われる、とか、言っているのと同じである。

 

日本は議院内閣制で首相は直接選挙でないので、やはり大統領選を見ていて、羨ましい感じがした。日本だと自分達が選ぶのではなく、政権与党の党内政治で決められてしまう不満がある。韓国だって、大統領のスキャンダルが出て来れば、あのように民衆がすごいデモを繰り出すのも、直接選挙ならではといえる。

 

選挙結果についてかしましく騒がれているが、私は英国のEU離脱国民投票の流れをみていて、トランプ当選はありうるかもと思っていたので、「番狂わせ」とは思わなかった。

 

今朝もテレビに、佐藤陽子の元夫、外交コンサルタントをやっている岡本氏がNHK

選挙結果について語っていて、グローバリズム、ひととものが自由に行き交う世界の潮流に対して、その恩恵にあずかれない層の反発という言い方をしていたが、それはある意味あたってはいるが、いかにも「上から目線」で感じが悪く、論評もありきたりで、さしてキレがなかった。(このひとがずいぶんと早く外務省をやめて、しかし、外務省からの仕事を受注しているのが不思議。なぜやめたのか、あれこれ取りざたはされているが…首相補佐官とかもその後やっているし…)

 

しかし、トランプ支持者は彼らのいうような「階層」だけでなく、きれいごとや行き過ぎたポリティカル・コレクトネスに倦んだ、もっと諸々の層を惹きつけたように思われる。また、もともとはアメリカは孤立主義的、モンロー主義だったところ、第二次大戦ではチャーチルが戦争に引き入れたという見方もあるぐらいだから、行き過ぎた歴史の

振り子が反対に振れるのは自然な流れではないかと思う。

 

驚くのは、日本の官邸などは「想定外」だったのだろうか。であれば、信じられないことで、リスク管理がなってないもいいところ。今朝のニュースで安倍首相談話といって、今後も日米同盟堅持とおきまりのことを言っていたが、このひとは、天皇の生前退位報道のときもそうだったが、本音が顔に出るたちで、今回はこわばった顔で話していた。(当選後早速の電話会談でトランプに何か言われたのだろうか…)

 

安倍首相が後継者に想定しているという稲田防衛大臣も、昨日記者たちのぶら下がり取材に、日米同盟堅持を繰り返すだけで、しかも、安倍首相の名前を三回ぐらい連呼して、トランプについて質問しているのに的外れもいいところだった。

 

彼女は、かつて、右派の雑誌などで威勢よく憲法改正や国防に関して過激な発言をして人気(あくまでも保守派というか右派のなかで)となり、自民党からスカウトされて国会議員になった経緯があり、最近は、過去の「過激発言」がメディアで叩かれたりしているが、国会答弁がまったくといいほどできず、一度、やりこめられて泣きそうになったこともある、トンデモ大臣である。

 

首相のほうしか見ていない、昨日のインタビューで、ますますウンザリした。

 

安倍首相を唯一評価できるのは、おそらくは皇室典範により恒久的な生前退位の制度を法的に整備したい天皇の「ご意向」に反対して、特別措置法で今回かぎりにしようと攻防していることである。

 

生長の家をほぼ母体とする日本会議のような、極右といっていい団体に属している国会議員が多いことが最近メディアでかしましく言われ、日本会議叩きがさかんだが、日本会議等右派のひとたちは、天皇の退位の意向に反対しており、ついに、生前退位問題を討議する有識者懇談会のメンバー、東大名誉教授の平川氏が、「天皇はちょっとおかしいんじゃないか」と言い出して、袋叩きにあっている。

 

リベラル天皇が、天皇制護持の右派の論客たちに批判されているというねじれの構図である。

 

考えてみればわかることだが、「外装」は近代的でリベラルになっていても、天皇家というのは、千年以上も権謀術数のなかでサバイバルしてきた、「スーパーお公家」であるから、言を左右にしたり、明言しないことでひとや事象を左右するすべに長けている。そうしたDNAがある。

 

実際に、昭和天皇は、教育係であった杉浦重剛などから受けた教え、つまり、自らは決して矢面にはたたず、しかし政局に関わるやりかた、を実践していた。動かずして、ひとや流れを動かす、究極の「麿」政治である。矢面に立てば、駆逐されやすいからである。

 

パペットのように見えて、実は人形遣いであるような、恐るべき存在。ヒラリー・クリントンがそういえば、皇居で親しく語り合ったというのをニュースで近年見た。