Englishman in Tokyo

2月というのに、この冬いちばんの寒さに思える今日。今晩はもっと冷えて雪もちらつくかもしれないとの天気予報。けれど、さすがに関東なので、たいした降りではないだろう。

 

私は東京オリンピック不要論なのだが、そんなことを言っても、何かが変わるわけでもない。安倍政権は、まるでこれが本当の「自転車操業」であるかのように、オリンピックまでは、施設をつくり、街を開発し、旅行者を呼び込み、ありとあらゆる手段で、「お祭り景気」を演出するだろうと思う。

 

ただ、「祭りのあと」は?それが心配である。年金まで株式投資につぎ込んだりして、自転車が倒れないようにするのだろうが、そうやって走り続けたそのあとは?

 

昨日、処分書籍に入っていたのだが、もう一度読もうと、とっておいた英国人ストークス氏の日本擁護論みたいな新書をまた読んだ。彼はオリンピック大賛成で、自分の息子も会社(タレント業の事務所か?)を立ち上げたばかりなので、本当に嬉しく、彼もThank Godと感動していたと書いていた。

 

そして、今回の招致には、高円宮妃が皇族としては初めてスピーチをしたりした功績もあやかっているのではないか、素晴らしいことだ、と書いていた。景気がよくて潤うのは、ごく一部の層である。この部分を読んで、「彼は<恩恵享受側>なんだなあ」とつくづく感じた。

 

氏は、東京裁判を勝者による裁きとして批判しており、三島の伝記作家として、最近とみに著作や講演で活動しているので、氏の面妖さはある意味わかりにくい。私は氏についてはある種の疑念、留保をもっている。

 

現在の夫人は日本人なのだが(ハリーの母)、パリのボザール(国立美術学校)へ留学していて、ローマで二人は出会ったという。「杉山」という苗字と「美術」といえば、三島夫人が日本画家の杉山寧の娘であることを思い出してしまう。たまたま、同じ苗字、同じ関心領域ということはないわけでもないだろうが、一族なのではないかと私は感じる。そしてもしそうだとしたら、そのことを敢えて伏せているのはなぜなんだろう。

 

実は、一度、ストークス氏の講演を聞いたことがあって、そのあとの懇親会で氏の周りで話を聞いた。その時、あまり人はいなかった。

 

彼は三島夫人のことをたいそう悪く言うので驚いた。自分が呼ばれて三島邸に行くと、

そこにはニューズウィーク東京支局長がいて、夫人は足を組んでタバコをふかしながら、きつい口調で「ヘンリー、あなたには夫の伝記は書けないわ。キーンやサイデンステッカーのような学者じゃなきゃダメよ」と、言ったのだそうだ

 

三島の息子の話になったときに、定職につかなかった、いろいろやったけどうまくいかなかった的なニュアンスで「unstable」と表現していたが、私はその言葉を聞いたとき、それがあまり残念そうに言われていないことに、むしろ衝撃を受け、こころのなかで思った。「このひとは本当に三島のともだちだったのか?」

 

親しい友人であれば、三島から「最後の手紙」的なものを受け取ったら、無駄であってもなんらかの手立てを講ずるはずではないか。また、その息子がunstableな人生をおくっているのなら、表情が自ずと曇るというものだ。

 

私は、三島の人生がある時期から誰かに操作されていた、あるいは、文学座分裂のころから、あるいは、「生長の家」の信徒が楯の会に入ってきたころからか、いずれにせよ、外からのシナリオに動かれてきたという印象を持っている。

 

それは証明が難しいが、ひょっとすると、あれば自裁ですらなく計画殺人であったかもしれず、賢明な三島はそれを見抜きながらも、彼のなかで、別の意図から、それに気づかないふりをして、のっていたのかもしれない、とも考えたり。

 

いずれにしても、70年の3月の時点では、次回作、藤原定家についての約束を担当編集者にしていたわけである。「豊饒の海」もその時点では違った結論になるはずだった。

 

ストークス氏の本の最初には、事件の三週間前に帝国ホテルで食事をしたのが会った最後で、そのときに、「ヘンリー、日本語を学ぼうとしないなら、日本にこれ以上いても得るところはない。荷物をまとめて国へ帰ったほうがいい、」と言われたのだそうだ。

 

これは、ある意味、三島の「命売ります」のなかの、第三国人などと並んで出てくる奇怪な西洋人の親玉の名前がヘンリーということと合致するのではないか。三島はとっくに「お見通し」だったと感じる。それが今よく売れているのも歴史の偶然か。

 

三島は死ぬ必要はなかったと思う。しかし、誰がどういう意図で、そのシナリオを書いたのかは今ひとつわかりにくい。

 

最近読んだ満州国関係の本のなかで、「歴史がせりあがってくる時がある」というような表現があった。隠れたものが顕れるときということか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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