Kings

晴れと雨の交替の日和もそろそろ終わって、しばらくは晴天の爽やかな日が続くようだ。桜が終わると今度は一気に五月つつじが芽吹き始めた。冬のあいだはおとなしかった猫たちも、元気いっぱい草原で跳ね回っている。

 

1週間ぐらい前だったか、清朝ラストエンペラーの弟、溥任氏が死去したというニュースがあったが(テレビではやらなかった)、私は弟というと溥儀氏しかしらなかったので、それ以外にも弟がいたことにまず驚き、ヤフーJPのそのニュースにつけられたコメントの数の多さ(435とか)にもまた驚き、ネットでは人々の関心が高いことを知った。事情に通じているコメントも結構あってこれまた驚き。

 

まったく知らなかったが、この弟君とエンペラーの父君は、溥儀、溥傑と異なり、日本軍とは袂を分ち、中国側についた。日本ではラストエンペラーがらみだと、嵯峨侯爵家や天城山事件のことばかりで、この二人について語られることはほとんどといっていいぐらいない。

 

調べてみると、一説には、政治信条というよりは、こうして家を二派に分けることで、血脈を絶やすまいとしたのだとも言われたりする。

 

興味深いのは、戦時中のタイ国の姿勢が似ていて、日本軍に協力的な政治家、閣僚もいるが、何人かはそれに抵抗しており、それがために、戦後、連合国側にすべりこんで、「おとがめなし」になったという経緯である。日本人にはないしたたかな政治感覚だ。

 

そのタイだが、現在の王様は数々のクーデターもバランサーとして収めてきた名君のように思われているが(事実そうなのだろうが)、その先代はヨーロッパ生まれて、教育もあちら、帰国して即位するも、若くして亡くなった。が、それはどうも暗殺であるらしく、しかし、今でもその話はタブーなのだという。

 

その事件のことを書いた本を調べていて、邦訳はあるにはあるが、古書の出物が地方の古書店に一冊しかなく、しかも一万円は超えるので、原著(英語、南アフリカ人のジャーナリスト)を探したのだが、奇妙なことに、英語圏のアマゾン(英、米、加、印)のどこでもnot availableなのであった。

 

よほど読まれては困る本なのかもしれない。タイでは当然発禁本なのだが、欧米諸国で出物がまったくないというのも不思議なことで、が、そういうことは時々ある。つまり、欧米にとっても都合が悪いということだろう。

 

せっかく見つけたので、それは買うことにした。明日ぐらい届くだろう。

 

そういえば書いていて思い出したが、探してもどうしても見つからない本があって、それも不思議な本なのだ。

 

クリスチャンではない、ある哲学教授のところに、ある日、聖書の教えを伝えるひとたちが数人やってきた。非常に変わった内容で、それらをすべて伝えたあとで本にしてくれと言い残し、連絡を絶ったのか、いなくなった。教授はその本を出して、私はその本に「偶然古書店で出会った」ひとのブログでその本のことを知り、ずっと探したのだが、見つからなかった。教授はそこそこ知られているひとで、常識的な普通の人である。彼曰く、「そのひとたちは、自分たちが信頼できる、と思ったひとたちとにしか、姿を見せない」ということである。

 

この本も、どこを探してもなかったのが、今見たら、アマゾンで古書があった。探しても見つからない時もあれば、こうしてひょっこり出て来ることもある。Vの童話集もそうだったし、T翁の第一詩集もそうだった。