ヴィヴィアン・ウェストウッド

元日恒例のウィーンからの中継のニューイヤーコンサートは毎年見ているけれど、会場を埋める生花のアレンジメントをいつも楽しみにしている。以前、白と緑のみで埋め尽くされた時があって、それはそれは綺麗だった。

 
今年は赤やピンクの花が中心に使われ、日本人には馴染みにくい色合わせだけれど、黄金の装飾や天井画がビッシリ描かれた”ハプスブルガーな”空間には、よく似合っていた。
 
なかでも、瞠目したのは、恒例のバレエシーンが、英国のヴィヴィアン・ウェストウッドがデザインした衣装によって、斬新な雰囲気になっていたこと。
  
例年は、綺麗なことはたしかだけれど、ちょっと退屈するオーソドックスなものだったが、今年は振り付けはそんなにいつもと変わっていなかったと思うが、衣装が眼を楽しませてくれた。
 
 
ひとつめのバレエはヨーゼフ・ランナーのワルツ「ロマンティックな人々」。
 
男女5組のダンサーが順次登場して踊るのだが、女性の衣装はそれぞれベースカラーが違うものの、チュールやシルク生地を贅沢に何枚も重ねたもので(踊るには大変かも)、色もごくうすいローズ系統の組み合わせから、金鳳花イエロー、ペールグレーやブロンズ色みたいなものまで、繊細な色でそれぞれがまとめられており、うっとり。このひとは色彩のアンサンブル感覚が図抜けて素晴らしいのではないだろうか。
 
私は昔からとくに「夢」というものがなかった子供だったのだけれど、そういえば、子供時代の唯一の夢というのが、「ウィーンの舞踏会で踊る」というものだったことをふと思い出す。
 
さて、二番目のバレエ、ドリーブの「シルヴィア」はガラリと変わって。
 
 
女性ダンサーは、キルトのショートスカートで、下にチュールのパニエが何層にもなったもの。男性のほうはタータンの正装っぽいが、衣装の一部がケープ化しているようで、それを翻したり、巻き付けるようにして踊っていた。これはいかにもウェストウッドらしいパンクなデザインだった。
 
三番目は、終曲の「美しく青きドナウ」にあわせて男女二人のダンサーが踊る。
 
女性がシックなモノクロームの薔薇のプリント柄の衣装で、眼を惹いた。それに、ダンスシーンはおそらく別撮りしたものを放映しているのだろうが、この曲に関しては、その「フレーム」から逸脱して、なんと扉を開けて楽友協会のホールにまでダンサー二人が入ってきて、平土間で踊った。観客には嬉しいサプライズだったと思う。
 
エレガンスも損なわず、しかし、革新的なデザインも見せてくれて、新風を吹き込んでくれたウェストウッドに拍手!
 
「魅せられた」のも当然。「ヴィヴィアン」はアーサー王伝説では魔法使いマーリンすら監禁してしまった妖女であったわけだし…。マーリンはWestwood, 「西の森」に監禁されているのでしょうか…。